大学職員の採用試験では、現在の大学で実施されている取組や施策への理解度が高いほうが、志望動機やエントリーシートの内容が充実したり、面接試験でも対応しやすくなります。
また、面接試験においては、「最近、大学関連で気になったニュースはありますか」という質問など、直接的に大学のニュースに関する質問があったり、「本学で魅力的に感じる取組はありましたか」「本学でどのような取組に関わりたいですか」など、大学に関するニュースを理解しておくことで対応しやすくなるような質問があります。
そこで、この記事では、高知県立大学に関するここ数年のニュースを調べ、それぞれのニュースに記載のある取組の概要と、採用する側の視点からのコメントを付けてまとめました。
この記事は高知県立大学のニュースをまとめておりますが、高知県立大学の職員採用試験を受験する方だけでなく、大学職員を目指す人の大学業界の理解を深めることのできる内容としております。
この記事の内容
- 高知県立大学とはどのような大学か
- 第1章 教学マネジメントと大学の将来構想
- 第2章 「立志社中」――地域課題に学生が取り組む仕組み
- 第3章 高知の医療・看護を支える人材育成
- 第4章 地域共生学研究機構とリ・デザイン プロジェクト
- 第5章 高大接続と入試広報
- 第6章 研究成果と外部資金の獲得
- 第7章 国際交流と大学の発信
- まとめ:高知県立大学の動きをどう読むか
高知県立大学とはどのような大学か
大学の基本情報
| 名称 | 高知県立大学(設置者:高知県公立大学法人) |
|---|---|
| 起源・開学 | 1944年(昭和19年)に高知県立女子医学専門学校の設立が認可され、1947年に高知県立女子専門学校、1949年に高知女子大学(家政学部生活科学科)として設立認可された。1956年に文学部を増設、1998年の学部改組で看護学部・社会福祉学部と大学院看護学研究科を新設、2010年に健康栄養学部へ昇格。2011年4月に高知県立大学へ校名を変更し、男女共学化した |
| 学部 | 4学部4学科(文化学部文化学科、看護学部看護学科、社会福祉学部社会福祉学科、健康栄養学部健康栄養学科) |
| 大学院 | 2研究科(看護学研究科、人間生活学研究科)。それぞれ博士前期課程・博士後期課程を置く |
| 学生数 | 学部1,426名(男261名・女1,165名)/大学院78名(男15名・女63名) ※いずれも2026年5月1日現在 |
| 入学定員(学部) | 340名(文化学部150名、看護学部80名、社会福祉学部70名、健康栄養学部40名) |
| 収容定員(学部) | 1,376名 |
| 学長 | 甲田茂樹(第三代学長・2023年4月就任) |
| キャンパス | 池キャンパス(高知市池)、永国寺キャンパス(高知市永国寺町) |
| 主な附属施設・機関 | 地域共生学研究機構、総合情報研究センター、国際交流センター、健康管理センター、附属図書館。地域教育研究事業(あえる)、健康長寿研究事業も同機構のもとで展開される |
| キャンパス | 所在地 | 設置学部・主な機能 |
|---|---|---|
| 池キャンパス | 高知県高知市池2751-1 | 看護学部、社会福祉学部、健康栄養学部と、看護学研究科・人間生活学研究科。健康長寿研究センター、総合情報研究センター、健康管理センター、附属図書館を備える。隣接する高知医療センターと包括的連携協定を結んでいる |
| 永国寺キャンパス | 高知県高知市永国寺町2-22 | 文化学部と人間生活学研究科。市街地に立地し、地域教育研究事業、国際交流センター、総合情報研究センター、健康管理センター、附属図書館を置く。高知県公立大学法人の本部も同じ住所にある |
| 年度 | 入学定員 | 入学者数 | 入学定員充足率 |
|---|---|---|---|
| 2024年度(令和6年度) | 340 | 349 | 102.6% |
| 2025年度(令和7年度) | 340 | 358 | 105.3% |
| 2026年度(令和8年度) | 340 | 359 | 105.6% |
※大学公式サイトの情報公開「高等教育の修学支援制度」に掲載されている各年度の機関要件確認申請書による。収容定員1,376名に対する在学生数は、2024年度1,438名(104.5%)、2025年度1,449名(105.3%)、2026年度1,426名(103.6%)で、いずれの年度も定員を満たしている
女子医専から始まり、県立大学へ 80年の歩み
高知県立大学の起点は、1944年(昭和19年)12月に設立が認可された高知県立女子医学専門学校です。戦時下に女性の医療人材を養成するために設けられた学校でした。戦後の1947年に高知県立女子専門学校、そして1949年に高知女子大学(家政学部生活科学科)として設立認可され、新制大学となります。設立から2024年で80年を迎えた計算になります。
その後の歩みは、学部の増設と改組の連続です。1952年に家政学部へ看護学科を増設、1956年に文学部(国文学科・英文学科)を増設。1998年には大きな改組があり、看護学部と社会福祉学部、そして大学院看護学研究科が新設されました。2001年に大学院人間生活学研究科と健康生活科学研究科を設置し、2003年に管理栄養士養成施設としての認可、2010年に健康栄養学部への昇格と続きます。
転機は2011年4月です。この年、校名を「高知女子大学」から「高知県立大学」へ変更し、あわせて男女共学化しました。初代学長が就任したのもこの年です。さらに2015年4月には高知工科大学と法人統合し、高知県公立大学法人という一つの法人のもとに二つの大学が置かれる体制になりました。2011年の共学化と2015年の法人統合が、現在の姿をかたちづくった二つの節目です。
4学部2研究科という規模と、その内訳
高知県立大学は、文化学部・看護学部・社会福祉学部・健康栄養学部の4学部と、看護学研究科・人間生活学研究科の2研究科で構成されています。学部はいずれも1学科制で、文化学科・看護学科・社会福祉学科・健康栄養学科という構成です。入学定員は合計340名で、内訳は文化学部150名、看護学部80名、社会福祉学部70名、健康栄養学部40名となっています。
2026年5月1日現在の学部在学者数は1,426名です。学部別には文化学部546名、文化学部(夜間主コース)82名、看護学部329名、社会福祉学部302名、健康栄養学部167名という内訳になります。大学院は看護学研究科53名、人間生活学研究科25名の計78名です。学部と大学院を合わせても1,500名ほどという、全国的に見れば小規模な大学です。
特徴的なのが男女比です。学部在学者1,426名のうち女子が1,165名で、8割を超えています。看護学部は329名中304名、健康栄養学部は167名中156名が女子です。2011年に共学化してから15年が経ちますが、高知女子大学の時代から続く学問領域の性格が、いまも学生構成に色濃く残っています。文化学部には平成27年度から学生募集を開始した夜間主コースが置かれており、社会人が働きながら学べる経路も用意されています。
「県民大学」という自己規定と UoK Vision 2033
この大学を理解するうえで欠かせないのが、「県民大学」という自己規定です。2023年度にまとめられた長期戦略「UoK Vision 2033」は、10年先を見据えた三つの戦略として「学びの多様性による自己実現」「即戦力人材の育成」「地域共生社会支援」を掲げ、三つ目については「『県民大学』として教育研究の成果を還元」すると明記しています。教育・研究・社会貢献・大学運営の4分野で実行項目が整理されており、大学運営の分野が8項目と最も多い構成です。
2026年8月には、令和9年度入学生を対象にディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシーを一体的に改正することが公表されました。「学修者本位の学びの未来構想プロジェクト」の一環で、10年後の社会を見据えて育成する人材像を再定義したものです。従来の地域志向教育と高度な専門性教育を維持しつつ、「AI・デジタル等の最先端技術を活用できる教育」を新たに加えるという内容になっています。
甲田茂樹学長は2026年度の入学式で、「地域と共に育ち、地域に育てられる大学」という使命に触れ、AI・デジタル技術の進化に対応しながら「人々の暮らしを支え、人生を豊かにするプロフェッショナル」となることを新入生に期待すると述べています。県民大学という立ち位置と、専門職養成という機能。この二つが大学の言葉づかいの軸になっています。
池キャンパスと永国寺キャンパス
キャンパスは高知市内に2か所あります。池キャンパスは高知市池2751-1にあり、看護学部・社会福祉学部・健康栄養学部と、看護学研究科・人間生活学研究科が置かれています。健康長寿研究センターや総合情報研究センター、健康管理センター、附属図書館を備え、自然に囲まれた環境にあります。隣接する高知医療センターとは包括的連携協定を結んでおり、教育・研究の連携体制が組まれています。
永国寺キャンパスは高知市永国寺町2-22、高知市の中心部にあります。文化学部と人間生活学研究科が置かれ、地域教育研究事業や国際交流センターの拠点でもあります。2015年の法人統合にあわせて教育研究棟が落成し、2018年3月に施設整備が完了しました。同じ住所には高知県公立大学法人の本部が置かれ、高知工科大学の経済・マネジメント学群およびデータ&イノベーション学群も同一敷地内で学んでいます。
この永国寺キャンパスの構成は、他の大学ではあまり見られないものです。県立大学の文化学部と、工科大学の文系・データ系学群、そして法人本部が一つのキャンパスに同居しています。後述する「永国寺はらっぱフェス」に高知工科大学の特任教授が登壇しているように、二つの大学の距離が物理的にも近いという条件が、法人統合の実質をかたちづくっています。
地域共生学研究機構と、地域を舞台にした教育の仕組み
2024年4月、それまでの地域教育研究センターなどを再編するかたちで「地域共生学研究機構」が設置されました。地域教育研究事業、健康長寿研究事業、そしてリ・デザイン プロジェクトを束ねる組織で、この記事で取り上げるニュースの多くがこの機構の名前で発信されています。人と人とのつながりづくり、支え合える地域づくりを掲げ、カフェや本屋といった場づくりからまちづくりまでを扱う守備範囲の広い機関です。
教育面の看板が「地域共生推進副専攻」です。1回生必修の「地域学概論」「地域学実習Ⅰ」に加え、副専攻として指定された科目を所定の単位数まで修得して卒業した学生に「地域共生推進士」の称号が与えられます。2020年度以降の入学生については「地域学実習Ⅱ」の履修が必須とされています。2025年度の卒業式では、この称号が過去最多の39名に授与されました。
もう一つの柱が「立志社中」です。地域の課題解決に向けて地域の方と協働して主体的に取り組む学生の活動に対し、大学が活動資金を支援する制度で、採択されたチームは約1年間、地域で実践活動に従事します。2026年度は8プロジェクト・学生228名が採択されました。あわせて、翌年度の立志社中への申請を目指す準備期間を支援する「立志のたまご」も設けられており、学生の活動を段階的に育てる二層構造になっています。
卒業生とその進路
高知県立大学は、著名人の一覧を大学として公表しているタイプの大学ではありません。かわりに公式サイトで「卒業生ストーリー」として、実名で進路と現在の仕事を紹介する記事を多数掲載しています。掲載されているのは、津野町役場の地域コーディネーター、厚生労働省健康課保健指導室、高知赤十字病院の救命救急センターで働く専門看護師、勤医協札幌病院のソーシャルワーカー、広島市役所の生活保護ケースワーカーといった顔ぶれです。
この顔ぶれからわかるのは、進路が自治体・医療機関・福祉施設に厚く分布しているということです。看護師・保健師・助産師・管理栄養士・社会福祉士・精神保健福祉士といった国家資格に直結する学部を持つ大学であり、卒業生の多くは専門職として現場に入っていきます。海外の病院で働く卒業生や、大学院の博士後期課程に進んだ卒業生、母校の教員になった卒業生も紹介されています。
教員として大学に関わり続けている人物では、名誉教授の松﨑淳子が知られています。調理学を専門とし、家庭料理を科学として探究してきた研究者で、2021年に男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰を受けました。2026年5月にはNHKのETV特集「美味たる人生 100歳の調理学者 松﨑淳子」で取り上げられています。家政学部から出発したこの大学の歴史を体現する存在だと言えます。
この記事の構成
この記事では、高知県立大学に関する直近のニュースを、次の7つのテーマに分けて30件取り上げます。
- 第1章 教学マネジメントと大学の将来構想(4件)
- 第2章 「立志社中」――地域課題に学生が取り組む仕組み(5件)
- 第3章 高知の医療・看護を支える人材育成(4件)
- 第4章 地域共生学研究機構とリ・デザイン プロジェクト(4件)
- 第5章 高大接続と入試広報(4件)
- 第6章 研究成果と外部資金の獲得(5件)
- 第7章 国際交流と大学の発信(4件)
それぞれのニュースについて、取組の概要と、採用する側の視点から見たコメントを付けています。
第1章 教学マネジメントと大学の将来構想
(1)令和9年度入学生からディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシーを一体改正(教育担当)
- 実施部局:高知県立大学(教育担当)
- 発信日:2026年8月7日
- 出典:高知県立大学
取組の概要
高知県立大学が、令和9年度の入学生から適用するディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)とカリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)の改正を公表しました。対象は文化学部・看護学部・社会福祉学部・健康栄養学部の4学部です。
この改正は「学修者本位の学びの未来構想プロジェクト」の一環として行われたもので、10年後の社会を見据え、本学が育成する未来社会を担う人材像を再定義したことに基づいています。二つのポリシーが個別ではなく一体的に見直された点が特徴です。
改正の内容としては、従来から掲げてきた地域志向教育と高度な専門性教育を維持しながら、新たに「AI・デジタル等の最先端技術を活用できる教育」を加えるとされています。なお、令和8年度までの入学生および3年次編入学生には、従前の基準が適用されます。
取組に対するコメント
注目したいのは、ディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシーを「一体的に」見直したという書き方だと思います。三つのポリシー(アドミッション・カリキュラム・ディプロマ)は、本来は卒業時に身につけるべき力を定め、そこから逆算して教育課程を組み、それに合う学生を受け入れるという順序でつながっているものです。ところが実際には、それぞれが別々の時期に別々の会議体で作られ、内容が噛み合わなくなることが起こります。一体で改正したというのは、その接続を作り直したという意味になります。
ただし実務上は、ポリシーの改正は文書を書き換えて終わりではありません。ディプロマ・ポリシーを変えれば、それを達成するための科目群を組み直す必要があり、シラバスの記載、成績評価の基準、カリキュラムマップやナンバリングの更新まで波及します。学則や履修規程の改正手続きも要ります。しかも令和8年度までの入学生には従前の基準を適用するため、当面は二つの体系が並走します。教務部門にとっては、この移行期間の管理が最も神経を使う局面です。
大学職員としては、ポリシーの改正が教学マネジメントの中核にある業務だと押さえておくとよいと思います。認証評価でも内部質保証の観点から必ず確認される事項です。面接で教務の仕事を語るなら、履修相談や成績処理といった窓口業務だけでなく、こうした方針の策定・改正を支える仕事があることに触れられると、大学の中身を理解している人だと伝わると思います。
(2)令和8年度入学式を挙行、学部359名を含む384名が入学(大学全体)
- 実施部局:高知県立大学(大学全体)
- 発信日:2026年4月7日
- 出典:高知県立大学
取組の概要
2026年4月6日、新来島高知重工ホール(高知県立県民文化ホール)オレンジホールにおいて、令和8年度の入学式が挙行されました。学部4学科に359名、大学院2研究科に25名、合わせて384名が入学しています。
甲田茂樹学長は式辞で、本学が1944年の設立から戦後日本の歴史とともに歩んできたことに触れました。そのうえで、「地域と共に育ち、地域に育てられる大学」という使命のもと、新入生に「真理を探究する意義や面白さを経験」してほしいと述べています。
また、AI・デジタル技術の進化に対応しつつ、「人々の暮らしを支え、人生を豊かにするプロフェッショナル」となることへの期待が示されました。学部生に対しては「地域学概論」で地域課題に向き合うことの重要性を、大学院生に対してはパラダイムシフトのなかで学問を深める必要性を、それぞれ強調しています。
取組に対するコメント
注目したいのは、入学者359名という数字だと思います。入学定員は340名ですから、充足率は105.6%です。近年の推移を見ると、令和6年度349名、令和7年度358名、令和8年度359名と、いずれの年も定員を上回っています。定員割れに苦しむ地方の大学が少なくないなかで、この規模の公立大学が3年続けて定員を満たしているという事実は、まず押さえておきたいところです。
ただし実務上は、定員を上回ればよいという単純な話ではありません。公立大学法人には、設置団体である高知県との関係で定員管理の説明責任があります。超過が大きくなれば教室や実習の受入れ能力を圧迫し、看護や栄養のように臨地実習を伴う学部では、実習先の確保が現実的な制約になります。逆に下回れば授業料収入と交付金の算定に影響します。入試部門が合格者数を決める際には、この幅のなかで着地させる判断が求められます。
大学職員としては、入学式が単なる行事ではなく、その年度の学生数が確定する場でもあることを押さえておくとよいと思います。学籍の登録、学生証の発行、授業料の徴収、健康診断、履修登録。4月上旬の数日間に、複数の部署の業務が集中します。面接で入学時期の業務を語るなら、式典の運営だけでなく、その裏側で走る事務処理の連なりにも触れられると、実務の理解が伝わると思います。
ここから先は有料でお読みいただけます
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この記事では、高知県立大学に関するニュースを全部で30件取り上げ、それぞれに取組の概要と、採用する側の視点からのコメントを付けています。ここから先には、残る28件を掲載しています。
具体的には、過去最多39名に授与された「地域共生推進士」の称号、8プロジェクト・学生228名が採択された「立志社中」とその準備制度「立志のたまご」、よさこい祭りの運営スタッフに応急救護を教えた学生チーム、2015年から続く中山間地域等訪問看護師育成講座、県教育委員会と協働する子どもの第三の居場所「Kochi Teens Base」、96名が集まる認知症カフェ、1,300名超が訪れたオープンキャンパス、四国4県全市町村の悉皆調査を伴う厚生労働省事業の採択、芸西村と企業と組んで開発中の災害時要配慮者情報アプリ、そしてNHK ETV特集で取り上げられた100歳の名誉教授まで、高知県立大学の性格がよく表れた取組を扱っています。
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