大学職員の採用試験では、現在の大学で実施されている取組や施策への理解度が高いほうが、志望動機やエントリーシートの内容が充実したり、面接試験でも対応しやすくなります。
また、面接試験においては、「最近、大学関連で気になったニュースはありますか」という質問など、直接的に大学のニュースに関する質問があったり、「本学で魅力的に感じる取組はありましたか」「本学でどのような取組に関わりたいですか」など、大学に関するニュースを理解しておくことで対応しやすくなるような質問があります。
そこで、この記事では、成城大学に関するここ数年のニュースを調べ、それぞれのニュースに記載のある取組の概要と、採用する側の視点からのコメントを付けてまとめました。
この記事は成城大学のニュースをまとめておりますが、成城大学の職員採用試験を受験する方だけでなく、大学職員を目指す人の大学業界の理解を深めることのできる内容としております。
この記事の内容
- 成城大学とはどのような大学か
- 第1章 文系大学としてのデータサイエンス教育
- 第2章 他大学との連携と学生の学び合い
- 第3章 高大接続と高校生への学びの提供
- 第4章 地域・自治体との連携と生涯学習
- 第5章 教育の質保証と学生支援
- 第6章 文芸学部70周年と人文学研究の蓄積
- まとめ:成城大学の動きをどう読むか
成城大学とはどのような大学か
大学の基本情報
| 名称 | 成城大学(設置者:学校法人成城学園) |
|---|---|
| 起源・開学 | 1950年4月開学(経済学部・理学部の2学部でスタート)。学園としては1925年に現在の砧の地へ移転し、2025年に移転100周年を迎えた |
| 学部 | 4学部(経済学部、文芸学部、法学部、社会イノベーション学部) |
| 大学院 | 4研究科(経済学研究科、文学研究科、法学研究科、社会イノベーション研究科) |
| 在学生数 | 5,880名(学部5,763名/大学院117名) ※2026年5月1日現在 |
| 入学定員(学部) | 1,215名 ※2026年5月1日現在 |
| 収容定員(学部) | 4,860名(収容定員充足率118.6%) ※2026年5月1日現在 |
| キャンパス | 所在地 | 設置学部 |
|---|---|---|
| 成城キャンパス | 東京都世田谷区(小田急線「成城学園前」駅から徒歩約4分) | 経済学部、文芸学部、法学部、社会イノベーション学部(全学部) |
| 年度 | 入学定員 | 入学者数 | 入学定員充足率 |
|---|---|---|---|
| 2024年度(令和6年度) | 1,215名 | 1,444名 | 118.8% |
| 2025年度(令和7年度) | 1,215名 | 1,461名 | 120.2% |
| 2026年度(令和8年度) | 1,215名 | 1,306名 | 107.5% |
「所求第一義」と四つの綱領 澤柳政太郎から受け継ぐ教育理念
成城学園の根本の理想として掲げられているのは、「人生は真善美を理想とすると言われるが、学校は真理行われ道徳が通りまた美的の所でありたい」という言葉です。これは1926年の成城高等学校第一回入学式で、創立者である澤柳政太郎が述べた式辞に由来します。澤柳の生涯の志は「所求第一義(求むるところ第一義)」、すなわち常に究極の真理、至高の境地を求めよという言葉で表されており、現在も大学のビジョンの中心に置かれています。
成城小学校の設立時に掲げられた教育方針は、「個性尊重の教育」「自然と親しむ教育」「心情の教育」「科学的研究を基とする教育」の四つの綱領です。大正自由教育を代表する学校として出発した経緯が、そのまま現在の教育目標に引き継がれている形になっています。成城大学のミッションは「個性の暢達を主眼として、広く専門の学芸を研究教授し、広角の視野と高度の教養を具え、かつ、豊かな個性を持つ社会の先導者を育成」することとされています。
ビジョンでは「『所求第一義』の精神に則り、真理を究める研究を行うとともに、各人の個性を大切にする教育によって、独創性と協働性を培い、未来を切り拓くことのできる人材を育成」することが掲げられています。個性の尊重という言葉が創立時から一貫して使われており、後述するデータサイエンス教育や特別学修達成プログラムも、この「個性を伸ばす」という文脈のなかで説明されている点が特徴です。
経済・文芸・法・社会イノベーションの4学部が生まれた順番
成城大学は1950年4月に、経済学部(経済学科)と理学部(物理学科・化学科)の2学部で開学しました。理学部は1952年に廃止が決定され1954年に廃止されており、同じ1954年に文芸学部(文芸学科)が開設されています。開学からわずか4年で理系学部を手放し人文系へ舵を切ったという経緯は、現在の成城大学の性格を理解するうえで押さえておきたいところです。
その後、1967年に大学院(経済学研究科・文学研究科の修士課程)が開設され、1969年に博士課程が増設されました。1973年に民俗学研究所、1977年に法学部、1987年に経済研究所が開設されています。2000年に大学開学50周年式典を開催し、2005年に社会イノベーション学部が開設されました。2007年には短期大学部が閉学し、2009年に社会イノベーション研究科が設置されています。
直近では2019年にデータサイエンス教育研究センターが開設されました。学部の新設という形ではなく、全学的なセンターを置いて既存の4学部に横串を通すという方法をとっている点が、この大学の規模と方針を反映しています。学部を増やして規模を拡大するのではなく、4学部体制を維持したまま学びの中身を組み替えていく、という選択をしている大学だと読むことができます。
受験生に向けて打ち出しているもの
受験生に向けて前面に出されているのは、少人数教育とワンキャンパスという環境です。学部在学生数は5,763名で、4学部すべてが世田谷区成城の1か所に集まっています。専任教員は158名(教授108名、准教授41名、講師9名)、非常勤講師は423名という体制です。学生数に対して大規模とは言えない教員数ですが、その分ゼミナールを軸とした教育が打ち出されています。
もう一つの柱がデータサイエンス教育です。文系大学におけるデータサイエンス教育の重要性にいち早く着目したという説明のもと、全学生が専門領域に加えてデータサイエンスを学べる環境が整備されています。2024年度入学生からは特別学修達成プログラム「DAP(Distinguished Achievement Program)」が始まり、その第1弾として経済学部データサイエンスプログラムが開設されました。文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」の認定も取得しています。
入学定員充足率を見ると、2024年度118.8%、2025年度120.2%、2026年度107.5%と、いずれも定員を上回っています。ただし2026年度は前年から12.7ポイント下がっており、入学者数も1,461名から1,306名へと155名減っています。定員割れとは無縁の状態にありますが、超過幅の管理という観点では、直近で明らかに絞り込みが行われた年だと読むことができます。
成城学園前駅から徒歩4分、すべてが1か所に集まるキャンパス
キャンパスは東京都世田谷区にあり、小田急線「成城学園前」駅から徒歩約4分という立地です。1号館、2号館、3号館、5号館、7号館、8号館などの校舎に加え、図書館、スポーツセンター内のトレーニングセンター、法人事務局・大学食堂棟が一つの敷地内に配置されています。学部ごとにキャンパスが分かれていないため、4学部の学生が同じ場所で学ぶことになります。
建物の耐震化率は、2023年4月1日現在で100%となっています。調査対象となった延床面積は52,631平方メートルで、すべての施設が耐震基準を満たしているという公表がなされています。都市部のワンキャンパスは面積の制約を受けやすいのですが、その制約のなかで施設の安全性を確保してきたことがわかります。
この立地は、後述する世田谷区や区内大学との連携の前提にもなっています。成城学園が現在の砧の地に移転したのは1925年で、2025年に移転100周年を迎えました。文芸学部創設70周年の記念事業が「成城学園砧移転100周年事業」と組み合わせて実施されているように、大学単独ではなく「街とともに歩んできた学園」という文脈で企画が立てられている点が、この大学の広報の特徴です。
民俗学研究所・データサイエンス教育研究センターという研究基盤
成城大学を語るうえで欠かせないのが、1973年開設の民俗学研究所です。日本民俗学の創始者である柳田國男の蔵書を引き継いだ経緯を持ち、研究所の展示室では一般公開の特別展が開かれています。2025年には柳田國男生誕150年を記念した特別展が開催されました。学部の規模から見れば大きな大学ではありませんが、特定分野で全国的な位置を占める研究拠点を持っているという構図です。
人文系ではもう一つ、国際編集文献学研究センターがあります。手稿や草稿をどう読み、どう編集するかを扱う編集文献学の研究拠点で、2026年にはAIによる手稿画像解析をテーマとしたシンポジウムが開かれています。伝統的な人文学の方法とデジタル技術を接続する試みが、この大学では複数の部署で同時に進んでいることになります。
そしてデータサイエンス教育研究センター(2019年開設)が、経済研究所(1987年開設)とあわせて全学的な教育・研究の基盤になっています。文理融合のPBL型授業を推進する組織として位置づけられており、国文学科のゼミと組んだ授業や、企業・他大学との協定の窓口にもなっています。研究所・センターが実際に外部との連携の主体になっている点は、この大学のニュースを読むときの重要な視点です。
著名な卒業生
政治・行政の分野では、第80代内閣総理大臣を務めた羽田孜氏、元経済産業大臣の小渕優子氏、農林水産大臣を務めた江藤拓氏、元参議院議長の倉田寛之氏、元厚生労働大臣の小宮山洋子氏などが知られています。国政の要職経験者が複数出ている点は、法学部・経済学部を持つ都市部の私立大学としての性格を表しています。
経済界では、AOKIホールディングス社長の青木彰宏氏、ユニ・チャーム社長の高原豪久氏、フジテレビジョン社長の豊田皓氏、日本マクドナルドホールディングス社長の八木康行氏などが挙げられます。メディア・芸能の分野も厚く、俳優の田村正和氏、女優の鈴木保奈美氏、俳優・歌手の及川光博氏、ミュージシャンの森山直太朗氏、アナウンサーの永井美奈子氏、枡田絵理奈氏、吉田明世氏といった名前が並びます。
文学・研究では、直木賞作家の荻原浩氏、芥川賞作家の辻仁成氏、文芸評論家の斎藤美奈子氏などがいます。そして映画監督の大林宣彦氏も卒業生であり、後述するとおり、その私蔵資料のアーカイブ化を扱う研究会が母校である成城大学でキックオフされています。文芸・芸術系の卒業生の存在が、そのまま現在の企画につながっている例だと言えます。
この記事の構成
この記事では、成城大学に関する直近3年ほどのニュースを、次の6つのテーマに分けて26件取り上げます。
- 第1章 文系大学としてのデータサイエンス教育(5件)
- 第2章 他大学との連携と学生の学び合い(4件)
- 第3章 高大接続と高校生への学びの提供(5件)
- 第4章 地域・自治体との連携と生涯学習(4件)
- 第5章 教育の質保証と学生支援(3件)
- 第6章 文芸学部70周年と人文学研究の蓄積(5件)
それぞれのニュースについて、実施部局・発信日・出典を示したうえで、「取組の概要」として発表内容を3段落でまとめ、「取組に対するコメント」として、注目した点、実務上の難しさ、大学職員としての視点の3段落を付けています。
第1章 文系大学としてのデータサイエンス教育
(1)2024年度入学生から特別学修達成プログラム「DAP」がスタート、第1弾は経済学部データサイエンスプログラム(経済学部)
- 実施部局:成城大学 経済学部
- 発信日:2024年4月18日
- 出典:Digital PR Platform
取組の概要
成城大学は2024年度入学生から、特別学修達成プログラム「DAP(Distinguished Achievement Program)」を開始しました。主たる専門分野に加えて、もう一つ極める分野を学生自身が定め、「2本の柱」で体系的に学ぶという制度設計になっています。その第1弾として開設されたのが、経済学部データサイエンスプログラムです。
修了要件は、プログラム必修科目4単位、プログラム選択必修科目4単位、プログラム関連科目8単位の合計16単位以上の取得です。手続きの流れも定められており、1年次9月に希望調査、2年次から登録申請が始まり、修了認定は4年次の4月・9月と卒業時に行われます。修了が認定された学生には認定証とオープンバッジが授与されます。
ねらいとして掲げられているのは、人文・社会科学の専門知識とデータサイエンスを統合し、「独創性を備えた教養人」を育成することです。あわせて、文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」の認定も取得しています。学部の新設や改組ではなく、既存の学部の中に副専攻に近い枠組みを埋め込むという方法がとられている点が特徴です。
取組に対するコメント
注目したいのは、単位数と認定のタイミングが最初から細かく設計されていることだと思います。16単位という水準は、学生が主専攻と並行して取り組める現実的な分量に置かれていますし、1年次9月の希望調査から4年次の修了認定まで、いつ何をするのかが明示されています。副専攻的な制度は「制度はあるが誰も修了しない」という状態に陥りやすいので、履修の入り口と出口を先に固めたのは合理的な設計だと感じます。
ただし実務上は、こうしたプログラムの運用負荷は決して小さくありません。希望調査、登録申請、修了判定という三つの手続きが学年をまたいで発生するため、教務システム側で誰がどの段階にいるのかを追跡できるようにしておく必要があります。オープンバッジの発行も、発行基盤の契約、有効期限の管理、学生が卒業後に参照できる状態の維持まで含めて考えると、担当部署の継続的な業務になります。また、文部科学省の認定プログラムは定期的な更新審査があるため、科目の開講状況や受講者数の記録を平時から蓄積しておくことが求められます。
大学職員としては、こうした制度の「二本目の柱」をどれだけ実質化できるかが問われる場面だと思います。学生が主専攻の必修と時間割上で衝突しないよう科目配置を調整したり、修了見込みの学生に個別に働きかけたりといった地道な作業が、修了者数を左右します。面接では、DAPを「文系にデータサイエンスを学ばせる制度」と説明するだけでなく、履修から認定までの手続きが設計されている点まで踏み込んで話せると、制度を運用する側の視点を持っていることが伝わりやすいと思います。
(2)夏のデータサイエンス・ワークショップを開催、2023年度は延べ2,115名が受講(データサイエンス教育研究センター)
- 実施部局:成城大学 データサイエンス教育研究センター
- 発信日:2023年6月22日
- 出典:Digital PR Platform
取組の概要
データサイエンス教育研究センターは、正課授業とは別に、全学部・学科の学生を対象とした「夏のデータサイエンス・ワークショップ」を開催しました。学生の自主的な学びを応援し、個性を伸ばす教育を実践するという位置づけで実施されているものです。
2023年夏に開講されたのは4つの講座です。7月1日の「ドローンプログラミング講座」では「DroneBlocks」アプリを使ったビジュアル・プログラミングを体験し、8月2日の「言語データと心のメカニズム」ではアイトラッカーを用いた認知機能実験のデモと分析を扱いました。8月3日は「Unity AR体験講座」でスマートフォンのカメラに3Dモデルを表示する技術を、8月4日は「AIアート体験」でAIを活用したアート制作を扱っています。
受講者にはオープンバッジが発行されます。リリースでは、2023年度のセンターの講座受講者が延べ2,115名にのぼることも示されました。成城大学は文系大学におけるデータサイエンス教育の重要性にいち早く着目し、全学生が専門領域に加えてデータサイエンスを学べる環境を整備してきたと説明しています。
取組に対するコメント
注目したいのは、扱っている題材がドローン、アイトラッカー、AR、AIアートと、いずれも手を動かして結果が目に見えるものになっている点です。文系学部の学生にとって、統計やプログラミングは入り口で心理的な抵抗が生まれやすい分野ですが、成果物が可視化される題材から入れば、そのハードルは下がります。延べ2,115名という数字は、正課外の講座としては相当に高い参加水準だと思います。
ただし実務上は、この種の体験型講座は機材と担当者に強く依存します。ドローンやアイトラッカーは購入すれば終わりではなく、保守、バッテリーや消耗品の管理、実施場所の確保が必要ですし、ドローンについては飛行させる場所や安全管理のルールを学内で整えておく必要があります。講師を務められる教員が限られていると、その教員の異動や多忙によって講座が続かなくなるという属人化のリスクも生じます。オープンバッジについても、発行数が増えるほど発行基盤の運用コストが積み上がります。
大学職員としては、正課外の講座をどう記録に残すかという視点が重要だと思います。参加者数、学部別の内訳、リピート受講の有無といったデータを蓄積しておけば、認定プログラムの更新審査や自己点検評価の材料になりますし、次年度の講座設計の根拠にもなります。面接でこの取組に触れるなら、講座の中身だけでなく、延べ2,115名という数字を大学がきちんと出してきていること自体に注目したと話すと、データで語る姿勢が伝わると思います。
ここから先は有料でお読みいただけます
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この記事では、成城大学に関するニュースを全部で26件取り上げ、それぞれに取組の概要と、採用する側の視点からのコメントを付けています。ここから先には、残る24件を掲載しています。
具体的には、国文学のゼミがデータサイエンスと組んで萬葉歌を3次元デジタル空間にした文理融合の授業、福井県立大学の新設学部の「国内留学先」となる連携協定と社会イノベーション学部の単位互換、北海道木古内町との包括的連携協定、世田谷区の災害対策課と学生が組んだ「防災脱出ゲーム」、公認OB/OG訪問サービス「ビズリーチ・キャンパス」の導入、学生アンケートをもとに17名を表彰したベストティーチャー賞、そして柳田國男生誕150年記念特別展や卒業生・大林宣彦氏の私蔵資料アーカイブ研究会など、成城大学の性格がよく表れた取組を扱っています。
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